【心理塾】叱責からあなたを守るために—「聞き流し」ノ ススメ

組織のなかでも、家庭のなかでも、
一方的に叱責をうけることがあります。
「言ったほうは忘れるんだから、
聞き流したらいいんだよ」
とはよく言われますが、
この「聞き流す」って
どのようにしたらいいでしょうか。

突然ですが、
「二十四節気」をご存知ですか?
「夏至、冬至、春分、秋分」と聞けば、
馴染みがありますよね。
季節の移り変わりを反映する暦として
古くから使われてきました。

例えば、
3月前半にあたる「啓蟄(けいちつ)」は、「啓」は開く、
「蟄」は土の中に閉じこもる虫を意味し、
「冬ごもりから目覚めた虫が、
大地から顔を出す様子」を表す節気で、
春の季語でもあるようです。
それぞれの節気に意味合いがあり、
天候や動植物の様子を表しています。

長雨の続く梅雨や台風、
大陸からの寒波や大雪といった天候の変化、
あるいは、地震をはじめとした自然災害が、
時として、人にはどうにもならない脅威として繰り返されてきました。
天災を前に、なすすべなく立ち尽くすこともあったでしょう。
あるいは、不作を何とかやり過ごしながら、
粘り強く農作に励んで、自然の恵みを享受する。

ここで「二十四節気」は、
自然に順応するための知恵と言えます。

天災は避けられないと受けいれ、
人間の力では限界があると認識することによって、
移り行く自然に気候の法則を見出し、
できることを見つけてきた訳です。
天災などないと事実を捻じ曲げてしまっていたなら、自然の脅威になすすべのないままで
「今できること」を積み重ねることなど、不可能でしょう。

話が大きくなってしまいましたが、
この知恵は、誰かから一方的に責め立てられる事態にも応用できます。

つまり、相手からの叱責は、
自然災害なのです。
意見の対立は、どんな人間関係でもあり、
それをきっかけに、相手の意見を知れることもありますが、
残念ながら、パワハラやDV、児童虐待…
暴力的な言動により傷つけられるケースがあります。

「なんでそこまで言われなくてはいけない?」と感じるなら、
あなたに最優先で取り組んでいただきたいのは、
あなた自身を傷つきから守ることです。
叱責によってすでに傷ついている傷口に、
「自分が悪いから怒らせた」と塩を塗ることではありません。
ましてや「許してほしい」と下手に出ることはありません。
例え、相手から「お前が悪いんだ」と責め立てようとも、です。

この「自分を守る」ためには「聞き流す」こと。
例えば、
「また始まった。なんだか怒ってる。この噴火が収まるまで、ほっておこう」
「なんだかイライラしているな。津波はなるべく避けよう。散歩にでも行こう」
こんな具合です。
相手の度を過ぎた言動は、
その本人にとっても自然災害。
本人にコントロールできないものを、
他人であるあなたがコントロールなど、しきれないのです。
ここは気持ちを強く持って、聞き流しましょう。
対話は、お互いに落ち着いているタイミングやシチュエーションでできますから。

間違ってほしくないのは、
この聞き流しは、決して「逃げではない」ということです。
むしろ、あなたを「守る」ためです。
感情のままぶつかるのであっても、
淡々と理詰めで追いつめるのであっても、
人を傷つけていい理由にはなりません。
傷口を広げないように、自分を守りましょう。
この災害を生き抜けたなら、もう「あなたの勝ち」です。

加えて、
自分の世界を持っておくことも大切ですね。
仕事やアルバイトでも、オンライン上でも、サークル活動やボランティアでも、
何か没頭できたり、得意なことで役に立てたり、ほっとひと息ついたりできる。
そんな居場所を、できるだけたくさん見つけてください。
できれば、あなたにとって「居心地がいい」と感じられる人や条件にこだわりましょう。
そうして見つけた居場所では、あなたの味方にも出会えるでしょう。
これは決して夢物語ではなく、
ここから地続きにあるあなたの居場所です。